用語を覚えよう!
フラメンコはスペインの文化ですので、日本語の会話であろうとも、フラメンコ用語まで日本語に置き換えることはあまりしません。
踊り教室内での会話、歌い手やギタリストとの会話では、様々なフラメンコ用語が日常的に使われます。それを理解していない場合は、「日本語の会話なのに理解できない」ということがあるかもしれません。
フラメンコ用語を説明しているページは既に多くありますので、ここでは多くの用語には触れません。今回は、よく混同される次の用語に絞って、説明していきます。
レマーテ
ジャマーダ
シエレ
コンテスタシオン
これらの用語の違いを考えたことのない人は、この機会にしっかりと考えてみましょう。
全ての基本はレマーテ!
レマーテという言葉を聞いて、「歌の間に入る1コンパス」「歌の途中で入る休み」…このような認識を持つ人は多いと思われます。その認識は間違いではありませんが、踊り・歌・ギターのそろったフラメンコを理解するには不充分と言わざるを得ません。
remateは、rematarの名詞形です。どんな意味があるのか、インターネットで画像検索をしてみましょう。サッカー、テニス、バレーボールなど、スポーツの画像がたくさんヒットします。しかも、カッコいい場面ばかりです。何やら物騒なナイフの画像などもヒットしますが、フラメンコのレマーテはほとんどヒットしないでしょう。
レマーテの意味は「攻撃する」「締める」「トドメを刺す」といったところでしょう。スポーツの画像が多かったのは、シュートやスマッシュをレマーテと呼ぶからです。
これらを踏まえてフラメンコにおけるレマーテを考えると、「何かを強く締めること」と考えて間違いなさそうです。
踊りの曲のどこに、レマーテを行う箇所があるでしょうか?
たとえば…踊りのアレグリアスには、次のように多くのレマーテが出てきます。
歌の直前
歌の途中や歌の終わり部分
歌が終わって、パソなどを行って、一旦止まる箇所
シレンシオ・カステジャーノの直後
パソの終わりに続く部分(マルカールの直前)
ブレリアの歌の直前
帰り歌の直前
帰り歌の終わり部分(曲の最後)
「何かを強く締める箇所」は全てレマーテです。踊り手は、非常に多くの箇所でレマーテを行います。
歌の間に入るレマーテ
いろいろな曲種の歌のはじめの方に、レマーテを行う可能性の高い箇所があります。1コンパスまたは2コンパス歌が唄われて…その直後に、レマーテを行っても良い箇所がやってくるかもしれません。
「レマーテを行っても良い箇所」であって、必ずしもレマーテを行わなければならないわけではありません。もし、レマーテを行うのなら、しっかりと強く締めましょう。
歌い手が1コンパスまたは2コンパス唄った後、踊り手がレマーテせずにマルカールを行った場合、その箇所をレマーテと呼ぶのは適切なのでしょうか?これには、議論の余地が残ります。
ジャマーダ
llamadaは、llamarの名詞形です。これもやはり、一般的な意味を知るために画像検索をしてみましょう。スマートフォンの写真、受話器の写真、通話中の様子がたくさんヒットします。(電話などで)相手を呼ぶことが、一般的なllamarの意味です。
これを踏まえてフラメンコにおけるジャマーダを考えると、「歌やギターのファルセータを呼ぶ箇所」と考えて間違いなさそうです。
これだけなら話は簡単なのですが、困ったことに…まぎらわしい使われ方をすることが多いのです。何も呼ばずに曲を止めるだけの箇所をジャマーダと呼んだり、何も呼ばないのにジャマーダの振付を行う場合もあるからです。
これに関しては、まとめて後述します。
シエレ
cierreは、cerrarの名詞形です。これもやはり、一般的な意味を知るために画像検索をしてみましょう。ドアが閉まる絵、カギの写真、チャックが締まるイラストなどが、たくさんヒットします。
これを踏まえてフラメンコにおけるシエレを考えると、「曲の途中で、一旦完全に止める箇所」と考えて間違いないでしょう。
「アレグリアスのシレンシオの直前」と言えば、わかりやすいかもしれません。一旦完全に止まり、間を取ってシレンシオがはじまります。
踊りが止まったとしても、歌・ギター・パルマが続いている場合は、シエレという言葉を使うのは適切ではないと思われます。全てが完全に止まる場合をシエレと呼ぶのが適切でしょう。
コンテスタシオン
contestaciónは、contestarの名詞形です。これを画像検索すると、llamadaと似たような画像がたくさんヒットします。これでは、ジャマーダとコンテスタシオンの違いが不明瞭です。辞書で調べると…contestarには「答える、応じる」などの意味があるので、コンテスタシオンとは「何かに対する返事」と考えて間違いないでしょう。
コンテスタシオンという用語は、日本ではタラントの歌の途中のレマーテ部分に対して使われることが多いです。
「タラントの歌に対する返事として、踊り手がコンテスタシオンを行う」…これだけ理解していれば、フラメンコを踊るのに充分です。
タラントだけでなく、ソレア、ティエント、ブレリア、タンゴなどにおいても、歌のはじまりの方に、歌に対する返事をする箇所があります。「これらをコンテスタシオンと呼ばないのか?」…これは当然の疑問でしょうが、その答えを得ても踊りの上達にはつながりませんので、余計な疑問を解決するのは評論家に任せてしまいましょう(笑)。
まぎらわしい使われ方
シエレ?ジャマーダ?
曲の途中で強く踊られる箇所があった時、それがレマーテ、シエレ、ジャマーダのいずれであるかは、その部分の振付が終わるまでわからないので、どの言葉を使っても良いのです。
曲が一旦止まったのであればシエレ、止まらずに歌やギターのファルセータが入ったらジャマーダ、何も呼ばなかったらレマーテ…ということで良いでしょう。
また、ファルーカのジャマーダ(タンゴと似た形)では、曲が一旦止まることが非常に多いですが、ほとんどの人はこれをジャマーダと言います。これをシエレと言う人はあまりいません。「止まる合図、止まるためのジャマーダだった」という認識で良いでしょう。
意味の無いジャマーダ
アレグリアスを踊ったことのある人は、持っている振付を思い出してみて下さい。アレグリアスの最後の方にあるブレリア・デ・カイの、歌の途中にジャマーダの振付が入っていませんか?
歌の途中にあるジャマーダですから、歌もギターも呼べません。歌の途中でジャマーダを行っても、何の合図にもなりません。この形のジャマーダには全く意味はありませんが、習慣的に使われています。
まとめ
4つの用語を簡単に比較してみましょう。
レマーテ
強く締める箇所
ジャマーダ
歌やギターのファルセータを呼ぶためのレマーテ
シエレ
踊りだけでなく全員が一旦止まるためのレマーテ
コンテスタシオン
タラントの歌に返事をするためのレマーテ
全てに対して、意図的にレマーテという言葉を使いました。何かを呼んだり、曲を止めたりするためには、強く締める必要があるのです。
全ての基本はレマーテの下の方に、アレグリアスに出てくるレマーテを列挙しました。それぞれをどの言葉に置き換えたら良いか、あなたなりの答えを探してみて下さい。それができるようになっていたら、似たような用語を充分に理解できたと言えるでしょう。
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