構成を上手に伝えよう!
2020年現在、プロ・アマ問わず、フラメンコをソロで踊る人がとても増えています。リハーサルでは、踊りたい曲名の他に、曲の構成を伝えることがお決まりの儀式になっています。
踊り教室のリハーサルでは、「曲の構成を歌い手やギタリストに伝えることも勉強の1つ」として、生徒にそれを行わせる先生も多いようです。
自分の踊る曲の構成ですから、簡単に説明できそうなものですが、それが難しい人もいるようです。おそらく…構成は理解しておらず、振付を順番通りに覚えているだけと思われます。
プロ活動を行っている人は構成を伝えることには慣れていますが、伝えるべき情報を明確に理解しておらず、不必要な情報まで一緒に伝えてくる人もいます。
肝心なのはリハーサルが滞りなく進むことであって、構成を事細かく伝えることではありません。必要最小限の情報を手短に伝えるには、どのようにしたら良いでしょうか?
構成を理解しよう!
踊りの構成とは、振付の順番を説明することではありません。歌やギターとの関連性を理解する必要があります。そのために必要な用語はあまり多くありませんので、この機会にしっかりと覚えましょう。
サリーダ
歌
ファルセータ
足(エスコビージャ)
タパード
ブレリア
タンゴ
これらの用語を理解していれば、構成を伝えるための悩みの大半は解消されます。あなたの踊る振付の、どこからどこまでが上記のどれに該当するのかを、しっかりと把握しましょう。自分で考えてもわからない場合は、先生やわかる人に聞いて、リハーサルの場で困らないように準備しておきましょう!
構成の伝え方の例を、以下に挙げてみます。
「ティエントを踊ります。サリーダ、歌、ファルセータ、足、タンゴです。」
「ソレア・ポル・ブレリアを踊ります。サリーダ、歌1、歌2、ファルセータ、足、タパード、ブレリアです。」
とても簡単でしょう?
これ以外の用語には、アレグリアスに出てくる「シレンシオ」「カステジャーノ」、歌に関する「レマーテ」「リブレ」、「1コンパス振る(間を空ける)、ディレクト(間を空けない)」などがありますが、歌やギターを聞きながら臨機応変に踊れるようになれば、これらを伝える必要は無くなります。
不要な情報は伝えない
不必要な情報も一緒に伝えてしまうと、構成がわかりにくくなります。次のような伝え方をされることが、しばしばあります。
「アレグリアスを踊ります。カンテサリーダを歌っていただき、終わったら私は踊りはじめます。ジャマーダをしますので、1つ目の歌を歌って下さい。終わったらファルセータを4コンパス弾いて下さい。ジャマーダをしますので、2つ目の歌を歌って下さい。2つ目の歌が終わったら1コンパス振っていただいて、ジャマーダを出してからテンポを上げます。もう一度ジャマーダを出すので止まって下さい。止まったら、私からエスコビージャを始めます。途中で見ますのでタパードにして下さい。追い上げの足の後、ジャマーダをしたらブレリアの歌を歌って下さい。ブレリアを2つ歌っていただいて、次のジャマーダの後に帰り歌を8コンパス歌って下さい。よろしくお願いします。」
礼儀正しくて丁寧な説明ですが、この説明を受けた側は、最初の方の内容を覚えていないかもしれません(笑)。
以下のように要約してみてはいかがでしょうか?
「アレグリアスを踊ります。歌1、ファルセータ、歌2、テンポを上げて止まってから足です。途中でタパード、盛り上げてブレリアです。よろしくお願いします。」
簡潔な説明の方が、全体的な構成が伝わりやすいのです。
伝える必要の無い情報
前述した長文の中には、不要な情報が多く含まれています。それらが不要である理由を細かく説明しますので、参考にしてみて下さい。
「カンテサリーダを歌っていただき、終わったら私は踊りはじめます。」
→踊り手が何も言わなくても、ギタリストは前奏を弾き、歌い手はサリーダを歌います。いつ踊りはじめてもかまいません。
「ジャマーダをしますので、歌って下さい。」
→歌を呼ぶ為のものがジャマーダですから、ジャマーダの存在を伝える必要はありません。ただし、ジャマーダ無しに歌ってほしい場合には、ジャマーダが無いことを伝えましょう。
「ジャマーダを出してテンポを上げます。」「ジャマーダを出すので止まって下さい。」
→テンポを変えるように見えるジャマーダ、止まるように見えるジャマーダであれば、何も伝えなくてもバックは対応してくれます。
「歌の後、1コンパス振っていただいて、ジャマーダを出します。」
→歌が終わっても、ギターやパルマは続いています。1コンパスと言わず、好きなタイミングでジャマーダを行って下さい。
「追い上げの足の後、ジャマーダをしたらブレリアの歌を歌って下さい。」
→スビーダ(追い上げの足)の後のジャマーダに気付かない歌い手はいません。
「帰り歌を8コンパス歌って下さい。」
→帰り歌は、踊り手が帰り終わるまで続きます。特別な希望がなければ、コンパス数を指定する必要はありません。
必要最小限の情報を、手短に伝えられるようにしましょう。
残された課題
このように、構成の伝え方は簡潔で良いのですが、次のような不都合が発生する可能性があります。
想定していなかった歌を唄われる
ファルセータの感じや長さが合わない
「1コンパス振る、ディレクト」が踊り手の希望通りに行われない
これらに対応できないと困りますので、もっと細かく構成を伝えて安全に踊りたい人も多いでしょう。
しかし、踊り手の注文通りに歌い手とギタリストが演奏を行うならば、極論で言えば、歌やギターを聞かなくても予定通りに踊ることができます。そのようなリハーサルを繰り返しても、臨機応変に踊る力は養われません。
また、それらの細かい注文は、そのライブを見るお客さんにとって、果たして本当に大切なことでしょうか?「振付がそうなっているから」という理由は、踊り手個人の都合であって、お客さんにとっては重要とは言えないでしょう。
構成の伝え方は簡潔にして、不測の事態に対応する練習をした方が、リハーサルで得られるものは多いのではないでしょうか?
ディレクトに関することは、次の記事も参考にして下さい。
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